デッサンは全ての画風に通ずるものであり、絵の基本です。どんな画風を目指すにしても必ず基礎となるところです。

 

 

そこで、デッサン力向上の為に初心者の人に1つだけ実践してみてほしいことは、

 

「たまにトレースを利用して描いてみる」ということです。

 

 

トレース

 

「トレース」とは写真をコピーし、そのコピーの下にカーボン用紙を敷いて上からなぞることで、紙に線を転写させていくという技法の一つです。

 

トレースのやり方についてはこちらの記事にまとめました。

 

「トレース」と聞くと「ただなぞっているだけだから何の向上にもならない」と思われるかもしれないが、全くそんなことは無いです。

 

私は今まで30作品はトレースを使って人物画を描いてきましたたが、今と昔とでは比べ物にならない程デッサン力が向上しました。

 

 

なぜデッサン力が向上したのかというと、トレースで「見る力」が養われたからです。

 

「見る力」の重要性

 

絵をうまく描く為には対象をその通りに描かなければなりません。その為には対象をしっかり観察して形を理解しなければなりません。

 

ということはつまり「見る力」が必要不可欠になってくるということです。

 

学生時代、デッサンの授業で先生が「すぐ描こうとせずに対象物を360度見て、形を出来るだけ頭に刻み込んでから描くように」と言っていました。

 

「無意識にこんな感じだろう・・という想像で描いているからうまく描けないんだ」と。

 

 

これはまさにデッサンというものが対象物を「見たままに」「そのままに」描くことを本質としているということを教えてくれていたのだと思います。

 

 

つまり、絵を描くということは手を動かす技術に加えて「見る力」も相当に必要な要素になってくるということです。

 

 

「トレース」と「見る力」の関係性

それではなぜトレースで「見る力」が養われるのか。

 

一からデッサンをする場合は、輪郭線を正確に捉えつつ質感や光、影を同時に表現していかなければなりません。相当な技術が必要とされます。

 

それに対しトレースは、写真のコピーを上からなぞって線を転写するだけなので、ひとまず輪郭線の描写には気を遣わなくて良いということになります。

 

そうなると今度はトレースされた正確な輪郭線というものが信頼のおけるガイドになってくれるので、このガイドを利用することで、

 

質感や光、影だけをしっかり観察するということに注力ができるようになります。

 

 

 

以下画像のように顔の写真をトレースしたとします。

 

そして、トレースした線と実際の写真を見比べてみます。

 

 

そうすると例えば、右の眉毛から右目までの正確な距離を頼りに、まぶたがどの辺りから膨らんでいてどこに影を付ければ自然か、

 

また、目じりから小鼻までの間はどう膨らんでいるからどこに光を描けば自然か、頬骨の光の当たり方、それに伴ってできる影の幅はどれくらいか、

 

下唇の光の大きさはどのぐらいか等、

 

圧倒的に「目安」をつけやすくなり、複雑な顔の作りを正確に捉えることができるようになります。

 

つまり信頼できる正確な輪郭線があるおかげで、「見る」ということ自体に余裕が持てるようになるのです。

 

 

そうなると今度は無意識に「ここでは綿棒を使って自然にぼかした方が良いだろう」とか、

 

「ここは丸みが付いている部分なので、半円を描くように手を動かそう」とか、

 

相乗効果で正確な描写ができるようになるのです。

 

 

文章の説明ではなかなか理解が難しい部分があると思いますので是非、デッサンとデッサンの合間に織り交ぜてトレースを実践してもらえればと思います。

 

「見る」ことを習慣付ける

上記のような意識が定着すると今度は考え方においても、

 

描くよりもまず「形がどうなっているかしっかりと見てから描こう」

 

という順序立てが身に付くようになります。

 

この順序立てを身に付けるという意味でもトレースは非常に効果的な方法だと言えるでしょう。

 

改めてですが、トレースは形を捉える力を養う為の最も有効な手段だと私は考えています。

 

最後に 「デッサン」について

 

トレースの活用について色々話してきましたが、画力が著しいうちは絵を描くこと自体になれる為、やはりデッサンをしっかり頑張るということが大切になってくると思います。

 

 

ただ「デッサンがなかなかうまくならない・・・」と悩んでいる人も多くいるようです。

 

 

初めのうちはデッサンがうまく描けないのは当然のことであり、

 

 

それは単純に描いてる年月が足りないからであってごく普通のことです。

 

 

仕事でもスポーツでも、最初から「達人」なんてことはあり得ないのと一緒ですし、絵の分野の第一線で活躍している人たちも皆「うまく描けない」時期があり今があるのです。

 

 

従って「うまく描けない」と悩んでいる人も今まさに、絵の上達への階段を一歩一歩着実に上がっているということになります。