リアルな絵を描く為にはトレースが必要不可欠になると私は考えています。たまに「トレースは良くない、一から全て描くべき」という人もいますが、私は反対です。

 

なぜなら、リアリティを追及するなら絶対的に「正確な描写」が求められるからです。

 

トレースにどうしても抵抗があるという場合は、写真(資料)と紙に方眼マスを引いて当たり線を描く「グリッド」で輪郭線を転写する方法もあります。

 

ただグリッドはフリーハンドとトレースの中間に当たるようなやり方なので、ある程度のデッサン力は求められることになります。

 

輪郭線の転写に失敗して何度も消しゴムで線を消したりすると、グリッド線も一緒に消えてしまうことになりますので、理想は1発の描写で輪郭線を転写できることです。

 

なので、トレースに抵抗がある人も初めはトレースで輪郭線を描いてから、徐々にグリッドなりフリーハンドに移行していくのがベストです。

 

それでは具体的なトレースのやり方、注意点を解説していきます。

 

トレースに必要な道具と注意点

まずトレースの利点についてですが、

 

・リアリティ、完成度が上がる

・作業時間が圧倒的に短縮できる

という2点です。

 

「リアルな絵」を描く場合には、絶対的に輪郭線の正確さが求められますので、トレースならその壁をすぐにクリアできることになります。

 

それでは実際のトレースのやり方を解説していきます。まずトレースをする為に必要な道具は以下の5つです。

  • HBぐらいの鉛筆(推奨は「鉄筆」です。)
  • 10Bの鉛筆
  • トレーシングペーパー
  • マスキングテープ
  • ティッシュ

 

※先の細い鉄筆を使うとかなりトレースがやりやすいです。鉛筆だと芯先が折れたり、線が少し太めになってしまったり多少のストレスを感じることがありますので、個人的には鉄筆がおすすめです。

 

トレース用のカーボンの作り方

まずあなたがよく描く絵のサイズのトレーシングペーパーを用意します。

 

トレーシングペーパーは作品の上から被せることで作品保護の用途でも使えるので持っていて損はありません。私はA4、B4サイズの2種類を持っています。

 

トレーシングペーパーを1枚取り出し、10Bの鉛筆で塗りつぶしていきます。隙間が空かないよう細部までひたすら濃く塗っていってください。

 

全ての面を塗りつぶしたらティッシュでまぶすように伸ばしていって下さい。それが終わったらもう一度10Bの鉛筆で全ての面を塗りつぶしていき、再びティッシュで伸ばしてください。角の部分までしっかり伸ばしてください。

 

これでカーボンの完成です。

 

トレース方法

実際のトレース方法ですが、まず人物や物など、描きたい対象の写真を用意したら、それを紙媒体にプリントアウトします。

 

そしてそのプリントアウトしたものをマスキングテープで紙に貼り付けます。この時のポイントは上部の2か所とさらに左隅(右隅)にもう1か所貼り付けるようにするということです。こうすることでトレース中に紙が左右にずれることを防ぎ、正確なトレースができるようになります。

 

そしてプリントアウトしたものと用紙の間にカーボンをはさみ、HBぐらいの鉛筆で上からなぞるようにトレースしていきます。

 

なぜHBぐらいの鉛筆でトレースするのかというと、例えばシャーペンでトレースをした場合、トレースは少しだけ筆圧を強めにしないとうまく線が転写できない為、その分筆圧を強めるとシャーペンの芯が折れてしまい単純に作業がはかどらないからです。

 

ただこれは多少個人的な見解かもしれないので、シャーペンの方がやりやすいという人はそれでも良いと思います。

 

また10Bなどの濃いめの鉛筆でトレースをすると、元々芯が太く作られている濃いめの鉛筆では、細い線で転写したいような細かい部分のトレースができません。

 

追記:筆圧が強すぎると紙に筋後が残ってしまいますので注意してください。

 

このような理由からトレース時に使用するのはHBのぐらいの太さの鉛筆が一番適しているのではと思います。実際にトレースした線は下の画像のように筆圧が一定できれいなアウトラインになります。

 

重要な補足!!
絵によってはトレース後に「あ、線が濃すぎるたな・・」と感じることも多々出てくると思います。
その時は濃い部分を練ゴムで押さえて薄くしていくと効果的です。トレース時の筆圧を弱めにすればトレース線の濃さもコントロールできます。

 

プロもトレースを利用している

AIBOのデザインエアロスミスのCDジャケットのイラストも担当した世界的にも有名な空山 基さんは著書の中で以下のようなことを語っています。

 

「デッサン至上主義の人は写真をトレースすることをいやがるけれど、僕はあるものを使って何が悪いって思うほうなんだ。」

リキテックス大全

 

 

このような考えは限られた納期で良い作品を描かなければならないというプロとしての自覚から生まれたものなのだと思われます。

 

また原宿の東京デザイン専門学校に通っていた時のイラストレーターの講師も、普段のイラストの仕事では普通にトレースで絵を描いていると語っていました。

 

このように「トレース」は作業時間の短縮と、作品自体の質を一つ上のレベルに押し上げてくれるれっきとした技法の一つであるということが言えると思います。