怖い描写や、残酷な描写をする小説は多数存在しますが、私が数年間も話の細部を覚えていて夢にまで出てくる程怖い短編小説を紹介したいと思います。
それは江戸川乱歩の「芋虫」という短編小説です。
江戸川乱歩と言えば誰もが知るホラー作家であり、映画化された「屋根裏の散歩者」や「D坂の殺人事件」や「双生児」、「陰獣」等でも広く知られています。
出展:https://scrapbook.aishokyo.com/entry/2015/10/21/193733
そんな江戸川乱歩の短編小説の中でも20年以上前に読んだにもかかわらず未だに私の心に深く刻まれている作品がこの「芋虫」という話です。
ここからは私の見解を交えながら話の内容をお話しますが、私が内容を話したぐらいではこの短編小説の恐ろしさは決して損なわれないので安心してください。
精神にまとわりつく怖い短編小説 「芋虫」
この話は戦争で両手、両足を失った元軍人の話です。体が満足に動かないどころかしゃべることもできず耳も聞こえません。
妻に生活の全てを世話してもらっています。妻に意志を伝える手段としては頭を床に叩きつけて音を出すか、少しの表情の変化か、「目」で何かを訴えることだけなのです。
私は何度もこの短編小説を読んだのですが、その度に「もし自分が同じような状況になったら・・・」と想像しながら読むのが好きでした。
薄暗い部屋で同じ絶望の淵に自分が置かれたらどんなに狂おしいかと考えながら。
初めてこの短編小説を読んだ時、話の中盤ぐらいまで「まだ目が見えているだけましだなあ」とこの短編小説を少し見くびりながら読んでいたいたことを覚えています。
しかしその後そんな見くびりはすぐに覆されたのです。ある出来事でこの元軍人は視覚も失うことになるのです。
何も見えず、何も聞こえず、何もしゃべれず体もほぼ動かせない・・・まさに芋虫となったわけです。
私は小さい頃から盲目ということが人間にとって一番恐ろしいことだと考えていたので、その恐怖がこの短編小説によってさらに深く精神に刻まれました。
この短編小説を読んで以来、自分が身動きが取れずに閉所でもがき続ける夢をよく見るようになりました。何か精神的に辛いことがあるとそれに連動してそういった悪夢によくうなされるようになりました。
この短編小説の内容はまさに「芋虫」のようにその後の私の人生にしつこくまとわりつくような存在になったのです。それだけ恐ろしい負のパワーをこの短編小説は持っているのだと感じます。
先程触れた盲目の恐怖について少し語らせてもらいたいのですが、小説でも夢でもなく現実に盲目の人はたくさんいます。
その人達の中でも、生まれながらに眼球が無いという人がいます。ベトナム戦争時にアメリカ軍により枯れ葉剤がまかれ、その枯れ葉剤を浴びた人から眼球が無い子供が生まれたのです。
しかもその子供の次に生まれた3人の兄弟全てに眼球がありませんでした。この4人の子供達は「見る」という概念すらわからないまま生きていくことになります。