アウトサイダーアートとは、主に芸術の訓練を受けていない強迫的幻視者や知的障害者の作った作品のことを言います。
アウトサイダーアートは別名「アール・ブリュット=生の芸術」とも呼ばれています。私はこの「生の芸術」という言葉が大好きです。
何の欲も美化も持たないアウトサイダーアーティストのグロテスクな密集型の作品を3つ紹介します。
アウトサイダーアート1 「密集型の粘土造形」
出展:THE WORLD OF OUTSIDER ART
出展:THE WORLD OF OUTSIDER ART
fa-th-large 西川智之(ニシカワサトシ)
滋賀県生まれの知的障害者の西川氏は上の作品のような「密集型」の粘土造形を得意としています。
作風はある一つの個体を作り、それを何層にも貼り合わせ一つの奇妙なオブジェにしていくといったものです。
西川氏は最初の頃、人や魚の作品をよく作っていたようですが、ある時、グロテスクな密集型の表面をした「パイナップル」の粘土造形の作品を作ったところ、それを周囲に褒められ、それ以来、上の画像のような密集型の作品をよく作るようになったということです。
小さな穴や斑点の集合体を見ると恐怖を感じてしまう「トライポフォビア=集合体恐怖症」の人にとっては強烈な不快感を感じる程、密集度の高い作品になっています。
個人的には画像下段の作品が大好きです。集合体のグロテスクにプラス、肉の塊を連想させる色彩とつや感が、ついさっき体内から取り出したばかりの臓器のような躍動感を放っているようにも感じられます。
アウトサイダーアート2 「トゲのグロテスク」
出展:THE WORLD OF OUTSIDER ART
出展:THE WORLD OF OUTSIDER ART
fa-th-large澤田真一(サワダシンイチ)
自閉症を抱える澤田氏はトゲの魔術師であり、粘土でつくった無数のトゲを植え付けることで自分自身が作品の中に溶け込み、それにより至福を感じながら制作に没頭しているということです。
元々、手先が器用だった澤田氏は、ある別の精神障害者が粘土制作をしている風景に見入ってしまい、それがきっかけで粘土造形の魅力に取りつかれていったとのことです。
澤田氏の作品にはグロテスクの中に、ある種の「可愛らしさのようなもの」も感じられ、自閉症のため対話ができない澤田氏の中に眠る「優しさ」のような柔らかい人間性も垣間見えるような気がします。
澤田氏の作品には多くのファンがいるようです。
アウトサイダーアート3 「無数の漢字」
出展:THE WORLD OF OUTSIDER ART
出展:THE WORLD OF OUTSIDER ART
fa-th-large喜舎場盛也(キシャバモリヤ)
上のマダラ模様のような画像は隙間なく埋め込まれた漢字の集合体です。
作成者の喜舎場氏は漢字自体が持つ「形の美しさ」「画数による空間の面白さ」に惹かれ、紙一面に漢字を描き続けるアーティストの一人です。
知的障害の喜舎場氏はとにかく漢字が好きでたまらないらしく、よく通うクリニックにまで漢和辞典を置いてもらい、それをいつも食い入るように眺めるほど漢字にとりつかれてしまったということです。
上の画像のような「漢字作品」の制作時間は、普通のノートほどの大きさの紙に、新聞の活字ほどの大きさの字で書いたもので約6か月の制作期間を要するようです。
また喜舎場氏は販売用カタログ等ののひらがなを強引に漢字に変換し、それを「漢字作品」の素材としても使っているとのことです。